2022・4・10 清水エスパルス戦@アイスタ
どんな内容であっても、負け試合で追いついた試合の後は、ホッとしてしまいます・・・
ただ試合内容としては後半ロスタイム、パワープレーをきっかけに追いついた1-1という引き分けは、決して褒められたものではありません。
しかしこの試合、片野坂監督が試合中に何度も行った修正が、ガンバ大阪のこれから進む道なのでは、と感じたため、いつもの採点と分けて書くことにしました。
ではさっそく行ってみましょう。
先発メンバー含めた前半の狙い
まず布陣としては、お互いに4-4-2のミラーゲームとなりました。
大型FW(パトとオセフン)を頂点に、トップ下気味に機動力のあるFW(山見と鈴木)という組み合わせもお互い似ていましたが、立ち上がりは清水のペースに。
これは戦術的な部分、というより、相手の出足が良く、一方で連戦の中でガンバの出足が鈍かった、という点が大きかったと思います。
試合序盤、ガンバは両サイドハーフが前節京都戦と同じように、サイドバックへのパスコースを消しながら相手CBにまでプレッシャーをかけていました。中央にボールを出させて、斉藤&ダワンのボール奪取力を生かしてひっかけ、ショートカウンターを打ちたい、という意図を感じました。
しかし清水は、鈴木唯がボランチの後方で嫌なポジショニングを取ってボールを引き出すため、斉藤とダワンが後ろ髪をひかれて、相手のボランチまで積極的にプレスに行けない状況に。
そうなると、清水の両ボランチから、わかりやすいポストプレーヤ―のオセフンに、何度も縦パスを付けられ、サイドに展開する形などでチャンスをつくられてしまいました。
しかし片野坂監督も、前半途中にすぐ修正をはかります。
左MFの石毛をトップ下に、山見を左サイドに配置し、中盤の形を変えてきました。
3対3に人数を合わせたことで、ボランチへはしっかりとプレッシャーがかかるようになり、オスフンに次々と縦パスが入る状況は減りました。
立ち位置的な問題が解消されると、試合の流れを生むのは選手個々のクオリティーに。
清水は鈴木唯がうまく間で引き出して前を向き、攻撃にアクセントをつけていました。
一方、ガンバでその役を担ってほしかった石毛や山見は、せっかくボールが入っても質が低く、すぐに失ったり、奪われなくても下げるパス、というプレーに終始。
この差が前半の両チームの差として現れたと感じました。
結局、一番チャンスになるのはパトへのロングボールからセカンドボールを拾ってカウンター、という形でした。
後半 片野坂式可変システムの狙いは??
後半、片野坂監督は石毛に替えて倉田を投入。
攻撃時は倉田と山見を2シャドーにした、3-4-2-1に。
一方で守備で押し込まれたら、両サイドのウイングハーフが下がるのではなく、左の黒川だけが下がって4-4-2へと変化。
攻守で形を変える可変システムを導入しました。
攻撃時の立ち位置から、守備時は→の方向に選手たちがスライドしてブロックを形成する、といった感じでした。
攻守で布陣を動かすことは、リスクもあるはず。
ただ前半の途中から守備は安定してきただけに、後ろの4-4のラインは崩したくない。
その一方で、清水の固いブロックを崩すためには、立ち位置でずらすことが必要だ、と片野坂監督は考えたのでしょう。
しかしその中で、後半13分に深い位置からFW鈴木唯にふんわりとしたクロスを上げられ、これが193センチのオスフンに。シュートは一森が何とか止めましたが、そのこぼれ球を再び押し込まれてしまいました。
3バックから4バックに戻す際に生まれるサイドでの隙をつかれた、ともいえるでしょう。
ただ攻撃は、3-6-1にすることで、相手とのずれを生み出せそうな気配はありました。
わかりやすかったシーンを紹介すると…
右CBの高尾から、ボランチの斉藤が相手SH後藤の近くでパスを受けます。
この時点で右ウイングハーフの小野瀬は高い位置に。
斉藤が後藤を引き付けている間に、小野瀬とシャドーの山見は近い立ち位置を取り、相手の左SB山原がどちらを見ればいいのか迷わせます。
斉藤は近くのダワンに送り、そこからダワンがフリーとなっている方の選手に展開し、サイドで数的有利をつくる、という狙いがあったように思います。
しかし清水もスライドが速く、サイドに起点はできても、なかなか中央を割るまでには至らず。
後半途中、疲れの見えてきた山見、斉藤、ダワンに変え、坂本、山本、奥野を投入。
ボールを動かす能力の高い山本を中心に、押し込むことはできましたが、なかなか相手のゴール前は崩せず。逆にカウンターを浴びて、決定的なピンチも何度か迎えましたが、昌子、三浦のふたりを中心になんとかしのぎ切りました。
そして最終手段としてペレイラを投入し、小野瀬を右サイドバックに。
相手は完全に5バックにしてゴール前に人数を集めてきたことで、サイドからのクロスは上げやすくなり、押し込むことに成功。
割り切ってパワープレーに持ち込み、最後はゴール前で得たFKから、小野瀬の同点ゴールが生まれました。
片野坂監督は何がやりたいのか
うまくいかないとなると、直ぐに修正を図る片野坂監督の打つ手の速さは、昨季までのガンバでは全く見られなかった点。
一方でこうも戦い方を変えられると、ガンバのスタイルとは?? という疑問も生まれている人が多いのでは、と思います。
ということで、清水戦で起こったことをヒントに整理してみます。
- 守備の特徴…ダワン、斉藤のボール奪取力を生かすため、取りどころはサイドというよりピッチ中央に。SHやFWはそこに追い込むようなプレスのかけ方を行う。中盤を突破されれば、4-4のブロックをしっかり組み、ボランチがサイドのカバーにも出ることで、できる限りCBは中央を固めて跳ね返す。
- 攻撃の特徴(4-4-2)…中盤でひっかけたら、まずは山見やパトの動き出しを見逃さず、速いカウンターを狙う。そこが難しければ、ボールを動かしながら山見、プラス両サイドハーフ(小野瀬や石毛、倉田)がライン間で受け、サイドバックの攻撃参加も促す。またボランチの一人が最終ラインに下がることで、CBと後ろ3枚をつくって、両サイドバックを上げる形も。
- 攻撃時の特徴(3-6-1)…カウンターへの意識はベースに、両ウイングハーフに最初から高い位置を取らせることで、相手のマークにずれを生じさせる狙い。
またフォーメーション関係なく、相手のプレスがはっきりとはまってくれば、パトへのロングボールで中盤を省略。ペレイラとのツインタワーとなれば、パトが的でペレイラが衛星という役回りも。
片野坂監督は、月並みですが選手個々の特徴を生かして、攻守の形を作り上げようとしているように見えます。
そこに大分時代にも行っていた、ポジションで相手とのずれを生む攻撃スタイル(いわゆるポジショナルプレー)の要素を落とし込もうとしています。
ここまでの試合では、まだ選手個々の戦う意識からのショートカウンターや、パトへのロングボールが目立つことも否めません。
しかし清水戦で見せた布陣変更からは、大分時代の香りが漂ってきました。
まだ誰がマークを引き付け、誰をフリーにするのか、そして誰にボールを送るのか、という一連の流れにスムーズさはありません。
しかしこれが改善していけば、ポジショナルプレーにパトの高さなど個々の高い能力が組み合わさった面白いサッカーができるのでは・・・と期待しちゃいます。
開幕8試合を終えて2勝4分け2敗の11位。
残留争いをしていない状況にホッとしてしまう負け犬根性がイヤやなあ・・・と思いつつ、ガンバ版“カタノサッカー”が少しずつ積みあがられていく様を、今年は楽しんでいきたいと思います!!
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